シアバンディング形成
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- ニュートン流体にせん断流動を加えると、その速度に比例した均一な歪(速度分布)が生じます。しかし、高分子や、紐状ミセル、またウィルス系など、ある種の非ニュートン流体では、一定のせん断流動を加えているにも関わらず、試料内部の速度分布が不連続に変化し、異なる速度分布を持つ相に分離してしまうことが知られています。この流動の不均一化現象をシアバンドと呼びます。
- このせん断歪が局在化する現象は、20年来、多くの研究者の注目を集め、紐状ミセル系を中心に研究が進められてきました。シアバンドの発生には分子配向や微視的構造と関連があると考えられ、レオロジー測定の他、光学測定による分子配向評価、中性子散乱による微視構造解析などが行われてきましたが、その発生の基本原理は未解明のままです。紐状ミセル系ではせん断流動下において構造が変化してしまうため、このことがシアバンディング形成の基本原理を理解する妨げになっていました。
- 我々は、紐状ミセルよりもシンプルな系を対象に、シアバンド形成における普遍性の有無を探索しています。これまでに、シンプルながらもバラエティに富んだ複数の系において、シアバンドが形成されることを確認しています。
- [1] Shear banding in an F-actin solution,
- I. Kunita, K. Sato, Y. Tanaka, Y. Takikawa, H. Orihara, and T. Nakagaki, Phys. Rev. Lett., 109, 248303, (2012)
- [2] Direct observation of orientation distributions of actin filaments in a solution undergoing shear banding,
- K. Sato, I. Kunita, Y. Takikawa, D. Takeuchi, Y. Tanaka, T. Nakagaki,H. Orihara,
- Soft Matter, 13, 2708, (2017)