Soft Matter Group in Division of Applied Physics, Hokkaido University
ソフトマターの持つ複雑な構造,多彩な性質および機能の物理的解明とその応用を目指します。



 通常,外場により状態が変化すれば物理量(分極,磁化,歪等)は徐々に変化しますが,特に相転移が起こる場合にはある種の物理量は劇的な変化を起こします。相転移は氷の融解,水の蒸発に見られるように自然界に普遍的に存在する現象ですが,ソフトマターにおける相転移は構成分子の複雑さにより極めて多彩であり,その応用も多様性に富んでいます。ソフトマターは外力により,あるいは自発的に容易に非平衡状態となるため,非平衡現象の宝庫であり,非平衡統計物理学の恰好な研究対象です。近年の非平衡統計物理学の発展に伴って,基礎研究だけでなく、産業界においてもソフトマターの重要性はさらに大きくなっています。
下に、当研究室で進行している研究テーマをまとめました。


 ソフトマターの非平衡現象は当研究室の中心的課題です。特に(1)液晶の電気対流が引き起こす自発流れ現象、(2)流動場下でのコロイド粒子のブラウン運動、粘弾性媒体中のブラウン運動、(3)非平衡流体のマイクロレオロジーを詳細に調べています。
 最近、液晶乱流状態において特異なレオロジー挙動が発現することを発見しました。液晶乱流のレオロジーは、前例の無い研究課題です。
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参考文献:
Viscosity of Liquid Crystal Mixtures in the Presence of Electroconvection,
T. Nagaya, Y. Satou, Y. Goto, Y. Hidaka, H. Orihara, JPSJ, 85, 074002, (2016)
Brownian motion in shear flow: Direct observation of anomalous diffusion,
H. Orihara, Y. Takikawa, PRE, 84, 061120, (2011)


 高分子系やミセル系などは、せん断流動下においてシアバンドを形成することが知られています。我々のグループでは、アクチン・フィラメント水溶液でもシアバンドが形成されることを初めて発見しました。アクチンに加え、生体試料である微小管や、カーボンナノチューブのような人工物も対象とし、シアバンド形成の基本原理を探っています。
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参考文献:
Shear Banding in an F-Actin Solution,
I. Kunita, K. Sato, Y. Tanaka, Y. Takikawa, H. Orihara, T. Nakagaki, PRL. 109, 248303, (2012)



 ネマチック液晶のグリッドパターンを任意に作り出し、固定化することに成功しました。また、電場と光を利用し、ソフトマター媒体中におけるコロイド粒子等の大規模マニピュレーション法を開発しています。細胞系への応用はもちろん、二次元コロイド結晶の破壊や、欠陥形成ダイナミクスなどの基礎的問題を解決するための実験方法としても使用できると期待しています。
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参考文献:
Polymer-Stabilized Micropixelated Liquid Crystals with Tunable Optical Properties Fabricated by Double Templating,
Y. Sasaki*, M. Ueda, Khoa V Le, R. Amano, S. Sakane, S. Fujii, F. Araoka, H. Orihara, Advanced Materials, 1703054, (2017)
Large-scale self-organization of reconfigurable topological defect networks in nematic liquid crystals,
Y. Sasaki, V.S.R. Jampani, C. Tanaka, N. Sakurai, S. Sakane, K. V. Le, F. Araoka, H. Orihara, Nature Communications, 7, 13238, (2016)


 ほとんどのソフトマターは、メソスケールの内部構造を持ちます。この内部構造が支配するレオロジーを構造レオロジーと名付け、レオロジーの普遍性を探索しています。構造レオロジー研究をはじめた当初は、ソフトマターの中でも構造が最も単純な、サーモトロピック・スメクチック液晶とリオトロピック・ラメラ相が研究対象でした。最近は、より構造が複雑なコレステリック・ブルー相を研究対象としています。
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参考文献:


 バイオトレーサーを細胞核内部に発現させることにより、細胞核内部のレオロジーを調べています。ここでは主にマイクロレオロジー手法を用います。バイオトレーサーの運動を追跡することにより、広周波数範囲でのレオロジーを調べることができるようになってきました。
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参考文献:


 3Dプリンタの登場や自己集積化技術の向上によって、21世紀の産業界では、ますますメタマテリアルの重要性が増すと考えられます。我々が注目するのは、ソフトマターで構成されたメタマテリアルです。メタマテリアル・レオロジーの一つとして、折り紙のレオロジーに関する研究を開始する予定です。現在、構想を練っている最中です。
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