鈴木章名誉教授ノーベル賞特集

鈴木章 北海道大学名誉教授 ノーベル化学賞受賞・文化勲章受賞記念講演会

(2011年1月17日(月) 開催)

鈴木先生の講演会が、工学部のオープンホールで開催されました。
会場を埋めた学生たちの熱気に、先生も笑顔で応えていました。
人生を変えた本との出会い
鈴木先生
●日時/平成23年1月17日(月)
 15:00~16:45
●会場/工学部オープンホール

理学部から移籍した工学部でなにをやろうかと思っていたときに『ハイドロボレーション』という本に出会いました。ハーバート・C・ブラウン先生の著書ですが、非常に感銘を受け、手紙を書いて先生の研究室で研究をさせていただきました。当時は、ハイドロボレーションという反応は面白いけれども、その反応でつくられる化合物は有機合成の中間体としては使いものにならないと考えられていました。しかし私は、その有機ホウ素化合物こそ面白いと思っていました。

自分の研究が役に立つ喜び

今回ノーベル賞の対象となった「クロスカップリング」は、要するに炭素と炭素をくっつけて、新しい有機化合物を作るという反応です。最近、血圧を下げる薬を処方してもらったら、薬局の人に「これは鈴木先生の反応で作っている薬です」と言われました。研究者はみんな、自分の研究したものが世の中で役に立てばいいなと思っているんですが、なかなかそうはいかないのが現状です。それが実現したということは、とてもラッキーです。

オリジナリティのある仕事を
講演会後の祝賀会での鏡開き
▲講演会後の祝賀会での鏡開き

後輩である北大の学生諸君にお願いしたいのは、やはり独創的な、オリジナリティのある仕事をやってほしい、ということです。日本のような資源のない国が生きる道は一つしかないんです。付加価値の高いものを作る方法を見いだして、それを世界中の人々に喜んで使ってもらう、そういう道しかないと思います。そのためには、若い人たちに今、サイエンスやテクノロジーをもっともっと理解して、この領域に入って来ていただきたいですね。

学生からの質問コーナー
鈴木先生に質問する学生
▲鈴木先生に質問する学生

【質問1】スウェーデンの受賞式で他国の研究者とお会いしたと思いますが、日本の研究者の特徴と良いところはどこでしょうか? 鈴木 残念ながら、受賞式で会った方々とはあまり学問的な話をする機会がありませんでしたが、私が関係している領域では、日本の研究者のレベルは非常に高いと思います。私や根岸さん以外にもいい仕事をされている方が多く、ノーベル賞に値する方もたくさんいらっしゃいます。ノーベル賞は、同じ年に同じ部門では3人しかもらえないので、その点では申し訳ないことをしたと思いますが(笑)。

【質問2】近年、日本人のノーベル賞受賞者が増えています。今後そういった方がどんどん出てくるには、どういったことが必要でしょうか? 鈴木 個人的に、これは明治維新以来、我が国の政府が理科系の教育に関して非常に努力してきた成果の現れだと思います。研究にはたくさん費用がかかりますから、国を挙げたサポートが絶対に必要なのですね。とにかく政府や国民に、サイエンスやテクノロジーへの温かいサポートをお願いしたい。もちろん、皆さんのような若い人たちが一生懸命に頑張ることが第一条件ですけれども。

【質問3】先生は北大で永年研究をされてきたわけですけれども、この北大での研究環境や教育環境をどのようにお考えでしょうか? 鈴木 立地的な環境は非常にいいと思いますし、大らかでフレンドリーな雰囲気も素晴らしいですね。他の化学系の学部・学科の人たちとのコミュニケーションが良かったので、いい影響を受けました。共通の図書館があって、研究に必要な文献をたくさん利用できるのもいい。さらに今はインターネットもありますし、地理的に不利という考えは持ってもらいたくないですね。