研究ライフをぶっちぎれ!

「将来は研究者になりたい!」
あるいは研究者という選択肢が気になり始めているあなたへ。

偏西風の蛇行がもたらす大規模自然災害

環境フィールド工学専攻 河川・流域工学研究室
博士後期課程3年
北野 慈和
Yoshikazu Kitano

[ P R O F I L E ]

  • 出身地/北海道
  • 愛読書/日野幹雄著『流体力学』、岸保勘三郎・佐藤信夫著『新しい気象力学』、田中博著『偏西風の気象学』
  • 研究の必需品/ホワイトボード(で考えの整理)
  • 研究で意識すること/大元のデータを100回見る
ブロッキング現象が招く
世界各地の大規模自然災害

日本が位置する中緯度地域では、偏西風という西から東への風が吹いており、これに運ばれて移動性高低気圧が入れ替わり通過します。このためこの地域では天気が数日単位で変わりますが、時として中高緯度にブロッキング高気圧と呼ばれる規模の大きな高気圧が形成され、移動性高低気圧の進行を阻害する場合があります。この結果、気圧が通常とは異なる配置で停滞し、偏西風が大きく蛇行してしまうため、熱波や寒波、豪雨や干ばつが発生することがあります。これをブロッキング現象といいます。例えば2010年にはロシアで熱波が発生し、死者数はモスクワだけでも約11000人に及びました。また、2015年9月に関東・東北で発生し、鬼怒川の決壊に至った豪雨は、間接的にこのブロッキング現象が影響していたことが、私の研究により明らかになりました(図1)。こうした自然災害に対する防災、減災、さらには将来の変化に対する適応策を考え、複雑な自然現象を物理的な観点から解明することは、我々研究者の責任であると考えます。

図1 2015年関東-東北豪雨発生前日の大気中層の気圧配置
(土木学会2015年関東東北豪雨 報告書 第2章 気象・降雨特性・降水の時空間分布とメカニズム、土木学会・地盤工学会合同調査団、巻号無し、pp. 9-17、2016.より転載)

図2 偏西風の流れ場を再現する流体実験装置の概念図

地球の大気の流れを再現し
ブロッキング現象の解明に挑戦

このブロッキング現象のメカニズムを解明するために、私は偏西風を川の流れに見立てて解析する理論的手法を考案しています。この手法は著名な流体力学・気象学者のCarl-Gustaf Arvid Rossbyが提唱した手法を発展させるもので、偏西風ジェットが緯度や高度、その太さを変えながら蛇行した場合に、ジェットの運動・位置エネルギーの変化を定量化するものです。これは川の水がその深さや幅を変えながら流れることと類似しています。さらに、机の上に収まるような小さな水槽を用いて、地球半球の大気の流れを再現する実験も行っています(図2)。まず円筒の水槽を回転台に乗せて回すことでコリオリ力を発生させます。次に地球の極域が寒く、赤道域が暑いように、水槽の底面中央を冷やし、外周を温めることで温度の勾配による力が地球大気と同じようにかかり、水中に偏西風のような流れが再現されます。こうした理論的・流体力学的な手法を用いて、茫漠とし複雑な自然現象であるブロッキング現象の解明に日々挑んでいます。

実験で目に見えない現象が見えてくる
実生活と人命に結びつく気象研究

[指導教員]環境フィールド工学部門 河川・流域工学研究室 准教授 山田 朋人

北野君とは彼が研究室のメンバーになった5年前から、日々、流体力学的な側面を中心に地球水循環に関する議論を行ってきました。
今後の活躍を期待しています。