夢を実現する工学に向かって

夢を実現する工学に向かって
工学研究院長・工学部長 増田 隆夫

PROFILE
1957年1月11日岐阜県瑞穂市生まれ。79年京都大学工学部化学工学科卒業後、81年同大学院工学研究科化学工学専攻修士課程修了。82年京都大学工学部助手に採用。工学博士号取得後、講師、助教授を経て、2001年北海道大学大学院工学研究科教授に就任。その後、14年より工学研究院副研究院長を経て、17年4月より工学研究院長・工学部長。

国際社会に貢献できる工学系技術者を育成

北海道大学は1876年に設立された札幌農学校を源とし、農学部、医学部に続く3番目の学部として1924年に工学部が設立されました。 以降、北海道大学の基本理念である「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」及び「実学の重視」に沿って工学研究院および工学部は、未踏の領域で新しい学理・技術を創出させるとともに、国際的視野を持って健全で安全な社会を実現することができる「工学系の研究者・技術者」を育成することを目的としてまいりました。

今後は、資源、航空・宇宙、農林水産などの各分野において新たな工学の可能性を切り拓き、緊急時や災害時でも活用できる極限技術のフロンティアとなるべく、知恵と技術の研鑽に力を注いでいきたいと考えております。

「闇夜を飛ぶのはホタルだけではない」

工学系の研究・技術開発は、量子に始まり原子・分子、流体、固体、装置、そして海洋、大気、宇宙に至るまで全ての物質が関わる分野が対象となります。ここで、“影絵”を想像してみてください。影絵ではスクリーン上に映し出される像と、スクリーンの横に回り込んで観察(発見)できるものは全く異なります。

研究や技術開発に言い換えると、スクリーンの映像は見かけ上観測される現象であり、スクリーン横から観察することは、自分が得意とする分野以外の視点から現象を解析することになります。専門分野で多くのことを学んだ人ほど、専門分野以外の知見・考え方を積極的に取り入れ、目の前の現象を正しく理解して新しい領域を切り拓くことができます。

先達の先生方のお話のなかに「闇夜の中を飛ぶのはホタルだけではない」という言葉があります。自分の知見を基に、先入観を持って目の前の現象 を判断するのではなく、目に見えていない隠れた真理を絶えず追求する姿勢が必要で、そのような能動的な研究活動に関して唯一失敗が許される組織、それが大学です。皆さんも既成概念にとらわれず、今日の非常識を明日の常識にする「夢を実現する工学」に力強く歩き出していってください。

異分野・異文化の一流と互いに尊敬しあえる関係に

大学時代に体験しておきたい経験のひとつに、研究室内だけではなく異分野あるいは留学先などの異文化で「一流」と呼ばれる人たちと関係を 築くネットワークづくりがあります。互いに尊敬し合う間柄となるには、まず皆さん自身が日本の文化・歴史に関する教養を高め、相手にとって「もっと話したい」と思われる存在であるように努めることが肝要です。

多様な分野に関わる多くの人との間で形成されるネットワークは必ず、社会に巣立ってからの財産になります。この自然に恵まれた北大キャンパス で卓越した教育・研究環境を存分に活用し、多くのよき友人を得て、強靭なフロンティア精神と粘り強い肉体を養い、皆さんが工学院および工学部で充実した大学生活を過ごされますことを心より願っております。

(平成29年7月 / えんじにあRing 2017年7月号より)