研究紹介

CAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケットの開発

宇宙システム工学講座
宇宙環境システム工学研究室

研究開発の内容

低価格,安全で環境負荷が小さい小型ハイブリッドロケットを開発しています.プラスチックと液体酸素の固液ハイブリッド燃焼により高価な火薬類を使用せず,更に機体を再使用することにより,従来の小型固体ロケットに比較して打上げ単価を1/10以下に引き下げ,安価で手軽なロケット実験手段を提供します.

CAMUI型ハイブリッドロケットモータ

燃焼ガスが固体燃料表面への衝突を順次繰り返す新しい燃焼方式,CAMUI(Cascaded Multistage Impinging-jet,縦列多段衝突噴流)方式を発案し,固体ロケット並の小型高推力化に成功しました. 固体燃料は,軸方向に流路を設けた複数の円柱型ブロックから構成されます(図1).各ブロックの前端面に噴流が衝突し,気化した燃料と酸化剤との混合および固体燃料への熱移動が促進されます.


図1 CAMUI型モータ燃焼室


用途

  1. 高度 60 km までの成層圏を全てカバーする,完全再使用型小型観測ロケット
  2. 超小型衛星や衛星部品の打上げ環境試験や作動試験に用いる,完全再使用型テストベッド
  3. 弾道飛行により3分間の微小重力環境を提供する,完全再使用型微小重力実験ロケット

打上げ実証試験

推進剤としてアクリルと液体酸素を使用する打上げ実証試験モータを開発しました.内径 50 mm の燃焼室で推力 50kg を発生し,固体ロケット並の推力レベルを実現しました(図2). 2002年3月,2003年1月の2回続けて打上げ実証試験に成功し(図3),モータの基本技術は既に完成しました.液体酸素によるハイブリッドロケット打上げ成功は世界初の快挙です.

2004年3月には,ロケット機体にデルタ翼を取り付け,打上げ・滑空・旋回・雪上回収試験にも成功しました(図4).定常滑空速度(140 km/h)からの回収に成功したことにより,成層圏高度からの有翼滑空回収の実証に成功したと言えます.機体搭載カメラによる動画を下記で公開中です.
http://www.hastic.jp/news/camui_winged.mpeg

図2 打上げ実証試験モータ, 図3 打上げ実験の様子, 図4 有翼打上げ実験

大型化開発

平成16年度からは,地域新生コンソーシアム助成事業「ハイブリッドロケットによる成層圏観測、微小重力環境提供事業」において,到達高度100 kmを目指した大型化開発が始まりました.平成17年度末までに気象観測クラス(到達高度60 km)用のハイブリッドモータを開発し,その後3年程度で微小重力実験クラスの開発を行いたいと考えています.