研究紹介

ダイヤモンド結晶粒界の原子構造と電子状態

エネルギー変換マテリアル講座
マルチスケール機能集積研究室

ダイヤモンド結晶粒界の原子構造と電子状態

先端技術に不可欠のキーワードである"界面"は、わずか数原子の厚みしかない、極微の宇宙-ナノワールド-です。 当研究室では北海道大学が誇る、世界最高の超高分解能超高圧電子顕微鏡によって、界面の原子構造を調べるのみでなく、電子エネルギー損失分光電子顕微鏡によって、その電子構造をも同時に解析し、両者と物性とのあいだにある相関を把握することによって、界面主導型の新物性創製のためのガイドルールを見いだすことを目標としております。

ここでは,その一例としてダイヤモンド結晶粒界で見られた特異な電子構造を紹介致します。図1は超高分解能超高圧電子顕微鏡で撮影したダイヤモンド(112)Σ3結晶粒界の原子構造を示しております。ダイヤモンドをこの方向からみた場合、C原子は超高分解能電子顕微鏡でないと判別できません。また、原子の配列は結晶粒界に対して対称的である様子が分かります。図2にはダイヤモンド(112)Σ3結晶粒界から取得した電子エネルギー損失分光差分スペクトルを示します。差分スペクトルのピークの位置から、粒界をまたぐC原子間の結合はπ*結合が支配的であることが明らかとなりました。これは、結晶粒界において炭素原子間の結合はグラファイト的な結合様式へと変化していることを示しております。


図1 ダイヤモンド(112)Σ3結晶粒界の原子構造。


図2 ダイヤモンド(112)Σ3結晶粒界から取得した電子エネルギー損失分光差分スペクトル。