研究紹介
積層複合材料構造の最適設計とシステム工学
インテリジェントデザイン研究室
曲面を持つ積層複合材料の解析方法および構造最適化方法の開発
FRPプリプレグを重ねた積層パネルは、高い比剛性と比強度の特長を活用して宇宙航空分野で多用されていますが、今後はコスト低減と共に自動車産業など他分野へ、広く利用が拡大する可能性を持っています。しかし異方性材料を積層するため力学解析が難しく、また構造最適化に適した材料と言われ研究が活発になされながらも、その方法は実用段階より研究レベルにとどまっています。
図1 車体につけられた複合材料パネルの例
(Reinforced Plastic, 2000.9から転載)
本研究室では、複合材料の様々な特性、例えば材料異方性、材料特性の2値性などを考慮した解析ソフトを開発しています。また積層パネルの設計に当たって使用材料が決まると、設計の自由度として残るのは各層の繊維配向角度と厚さです。このため最適化に際しては繊維配向角度を設計変数に採用することが直接的であり便利です。しかし対応する数理問題は層数と等しい多次元の最適解探索が必要となり、最適化計算の負荷が過大となるため解法が困難とされていました。そこで本研究室では、物理的な特性を利用した層別最適化法(LO法)と呼ばれる最適設計法を開発しました。また従来から用いられてきた積層パラメータ法を、より実用的な最適化法となるよう改良しています。
図2 層別最適化法(Layerwise OptimizationApproach)の概念(対称8層の上断面図)
ISM法などシステム工学手法による機能解析と故障解析
工業製品には、長年の研究と経験が設計にフィードバックされた高度な製品から、ニーズに応じて十分な開発期間がなく製造され、設計指針が十分確立されていないものがあります。たとえば北国に欠くことのできない融雪機は、熱源部と雪を溶かす融雪槽が一体化して、層内に投入した雪を急速に溶かす事を目的とした機械です。しかし融雪機は工業製品としての歴史が浅く、流通し始めたのはこの10年ほどです。このためメーカーにより融雪方式に違いがあり、効率の良い設計方法と信頼性を確立するためには、融雪機の機能を分析して要素間の関係を明らかにする構造モデリングが重要です。
こうした機能分析は、システム工学のISM法やDEMATEL法によって可能です。ISM法は機能に関わると判断された項目をランダムにリストアップし、修正・削除・追加を主にコンピュータを用いて対話形式で行い、最終的には項目間の連鎖を系統的に求めます。またDEMATEL法は機能項目間の関係の強弱をランク付けすることにより、互いの影響度合いをグラフ表現することができます。本研究室では、このようにISM法とDEMATEL法を適用して、機械やシステムの機能グラフ表現を行うと共に、故障原因の相関関係をマトリックス表現して,統計的な観点から機能と故障の相互関係を考察する方法を研究しています。また現在はこの手法を応用して,機械工学における力学の知識を体系化することも試みています。
図3 ISM法による融雪機の機能のグラフ化(図内の○は機能要素,例えば⑥はバーナーなど)