研究紹介
磁気熱量効果を用いた冷却システムの最適化
マイクロシステム
マイクロサーマルマネージメント
マイクロサーマルマネージメント
強磁性体に外部磁場を付与すると,磁気スピンの方向が揃うため系の磁気エントロピーが減少します.同様に,消磁過程においてはエントロピーが増大します.この原理(磁気熱量効果)を利用した冷却システムは,古くから磁気冷凍機として知られており,主に極低温の生成のために用いられてきました.
磁気冷却システムの利点としては,1.フロンなどの温室効果ガスを使用しないため環境負荷が小さい,2.磁気冷凍機では,固体である磁性体に磁場をかけることで一様に温度変化が得られるため理想的な冷凍サイクルの効率に近づけることが可能である,3.動力は熱交換媒体の循環と,磁性体もしくは磁石の移動に必要なだけであるため,省エネルギー化がはかれる,4.コンプレッサーを使わないために低振動・低騒音を実現できる,等が挙げられます.
しかし,格子系の熱容量が高温になればなるほど大きくなるため,常温近傍においては,磁場変化を与えて得られるエントロピー変化が非常に小さくなり,結果的に常温では十分な冷却能力が得られません.この問題を解決するために,再生器を用いた冷凍サイクルを構築する試みがなされており,室温近傍での冷却システムの成功例がいくつか報告されています.
本研究では,主に磁性体からの熱の授受の方法とそのメカニズムに着目することにより,冷却システムの最適化に関する検討に加え,新たな熱交換手法を考案することにより,従来とは全く異なった磁気冷却システムの構築を目指しています.
図 磁気冷却システム