ウイルス様粒子(VLPs)を用いたノロウイルスの浄水処理性の検討

Tel: (011) 706-7230
 nobutaka@eng.hokudai.ac.jp
博士過程:
  • 白崎 伸隆 
 
COEリサーチアシスタント
環境リスク工学研究室


背景・概要

ノロウイルスは,その感染事例が世界中で年々増加していることに伴い,社会的な注目を集めている重要な病原体である.また,水道水中からの検出報告もなされているため,水道水を媒体としたノロウイルスの感染症を引き起こさないためには,浄水処理過程での挙動を十分に把握する必要がある. 通常,微生物(細菌類,原虫類,ウイルスなど)を用いた浄水処理実験を行う場合,対象微生物を人為的に大量に培養させ,浄水処理装置に添加することにより挙動を把握する.しかしながら,ノロウイルスは未だに組織細胞による培養に成功していないため,添加実験による浄水処理性の検討ができるだけのウイルス量を確保することは極めて困難である.また,感染の危険性を伴うため,取り扱いには特別な施設が必要となる.こういった問題から,ノロウイルスの浄水処理性についての検討はこれまでほとんどなされておらず,他のウイルスに比べて研究が格段に遅れているのが現状である. その一方で,ノロウイルス遺伝子の構造蛋白質領域をバキュロウイルスに取り込み,昆虫細胞で発現させることによって,ノロウイルスの外套タンパク(ウイルス様粒子:VLPs)を多量に得る技術が確立されている.また,このVLPsを用いて,ELISA法(酵素免疫測定法)によるノロウイルスの定量法が確立されつつある.

研究テーマ

ノロウイルスの物理的な浄水処理性の検討

研究手法

本研究では,得られたVLPsを用いてノロウイルスの浄水処理性について詳細に検討することを目的とする.VLPsは,構造が野生のノロウイルスと全く同じであり,ノロウイルス粒子と同等の抗原性を有するが,内部にゲノムRNAを持たず中空であるため,感染性はない.また,添加実験による浄水処理性の検討に必要なウイルス量を確保することもできる.そのため,特別な施設を必要とせず安全にノロウイルスの浄水処理性について検討することが可能となる.しかしながら,VLPsは感染性がないため,塩素消毒などの化学的な浄水処理過程でどの程度不活化されるかといった議論を行うことができないという限界もある. 従って,本研究では,得られたVLPsを用いて,凝集沈澱処理,膜処理などの物理的な浄水処理過程におけるノロウイルスの処理性について検討する.また,ノロウイルスの代替指標としての大腸菌ファージの可能性についても議論する.