原水水質に対応した合理的な膜選択および運転制御理論の確立

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博士課程:
  • 山村 寛 
 
COE研究員
水質変換工学研究室


研究背景

現在の我が国の都市部における水代謝システムは、未だに大量輸送・大量消費を前提とした一過型の上下水道施設を基に構成されている。しかし、各地で頻発する水不足、環境ホルモン等の微量有機汚染物質による水道水源の汚染、クリプトスポリジウムによる集団感染など、一過型の都市水代謝システムには近年多くの綻びが目立ち始めている。今後安全で良質な水を確保し続けていくためには、下水再利用や多元給水(Tambo, 2003; Asano, 1998; Okun, 1997)等を積極的に導入した新たな水代謝システムの導入が必要となってくる。膜処理は処理水質を飛躍的に向上させることができる一方で施設の小型化・分散化が容易に可能である(Mallevialle et al., 1996)ことから、新たな水代謝システムの基盤要素技術となりうる潜在力がある。しかし、使用継続に伴う膜の閉塞によって運転コストが高くなる(AWWA Membrane Technology Research Committee, 1998)ために、未だ広範な普及には至っていないのが現状である。

研究手法

膜ろ過法の運転コストを下げるためには膜閉塞を抑制する必要がある。膜閉塞の抑制には膜閉塞機構の理解が不可欠であるが、現時点では水処理過程における膜閉塞機構の解釈・理解は実質的にはほとんど進んでいない。現在、国内外の様々な企業から非常に多岐にわたる膜が入手可能になっていることを考えると、ある原水水質に応じて最高の性能を発揮する最適な膜が存在するはずであるが、これを選択できる術は現在のところ存在しない。また、同様の理由により運転条件を合理的に最適化することも不可能である。膜閉塞機構のより深い理解に基づいた合理的な膜選択・運転制御方法を提示できれば、膜処理技術の適用範囲を大幅に拡大し、新たな都市水代謝システムの構築に資すること大となる。

本研究の最終目的は、「合理的な膜種類・運転制御方法の選択を可能とするための膜閉塞機構の理解」である。広範囲の膜種類・原水水質を網羅して体系的な実験を行い、汎用性の高いデータセットを構築する。このデータセット及び膜閉塞性分の詳細な特性把握に基づいて膜閉塞モデルを提示すると共に、膜種類・原水水質から最適膜を提示できるマトリックスの構築を試みる