岩石におけるサブクリティカル亀裂進展

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 研究詳細(PDF:175KB)
博士課程:
  • 奈良 禎太 
 
COE研究員
環境フィールド工学専攻 大気地圏環境工学講座 地圏フィールド工学研究室

研究背景

地下発電所や原油地下備蓄空洞、あるいは放射性廃棄物の地下処分施設など、地下岩盤の開発が近年進められている。また、山岳トンネルや掘削岩盤斜面などは、実生活に大きく関わるものである。このような岩盤構造物には、長期安定性が要求され、その設計において、岩石の長期強度の予測が重要である。そのためには、岩石の時間依存性の破壊挙動に関する十分な知識が必要である。 従来の破壊力学では、亀裂先端の応力レベルがある臨界値(破壊靱性)に達したときに、亀裂が進展すると説明されてきたが、実際には、破壊靱性に満たない応力レベルでも、亀裂は緩やかに進展する。このような現象は、「サブクリティカル亀裂進展(Subcritical Crack Growth)」と呼ばれる。岩石においては、引張を受けた亀裂先端部の化学結合が、周辺環境中の反応物質と反応を起こすことによって劣化・分断する現象である「応力腐食」が主要な支配機構であると考えられている。 このような背景を基にして、岩石におけるサブクリティカル亀裂進展に関する研究を行っている。特に、岩石のサブクリティカル亀裂進展に及ぼす岩石組織および周辺環境の影響について調べている。

研究手法

試験方法として、Double Torsion(DT)試験法を用いている。図1に、供試体の形状および載荷形式の模式図を示す。DT供試体の形状は、長方形断面の薄板状である。また、図1に示されているように、DT試験では、切り欠きを入れた供試体の一端に、4点曲げの要領で載荷してねじりモーメントを加えることによって、供試体中央部に亀裂を進展させる。図2に、DT試験装置の概要図を示す。この図にあるように、供試体には、電動シリンダを介して荷重が加えられる。また、供試体の下側に取り付けられているデジタルマイクロスコープにより、供試体中を進展する亀裂を観察することができる。また、試験装置本体は、温度および湿度が制御可能な恒温室の中に、温度・湿度の制御系は、恒温室の外に設置されている。 これまでの主要な成果として、岩石のサブクリティカル亀裂進展に及ぼす水蒸気圧および先在亀裂の影響が明らかになった。
特に、水蒸気分圧の高い環境下において亀裂進展が促進されること、 先在亀裂の選択的配向性により亀裂進展異方性が支配されていることが明らかになった。