訃報

名誉教授 洪 悦郎 氏 (84歳)

名誉教授 洪 悦郎氏は,平成21年1月4日午前11時13分,心不全のため84歳で逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。

先生は,大正13年3月20日東京都に生まれ,昭和20年9月東京帝国大学第一工学部建築学科を卒業,昭和23年12月東京大学大学院特別研究生後期を中途退学して,直ちに本学工学部助教授に就任されました。 その後,昭和38年4月同学部教授に昇任し,建築材料学講座を担任されました。この間に,昭和37年から昭和51年に北海道立寒地建築研究所研究委嘱(研究部長)を兼任,昭和38年から昭和45年に本学低温科学研究所教授を併任,昭和51年から昭和54年には室蘭工業大学教授を併任されました。 昭和62年3月に北海道大学を停年退職し,同年同4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。 退職後は,昭和62年4月から平成2年3月まで北海道建築指導センター理事長を勤められ,昭和63年10月から関東学院大学工学部大学院専任教授を兼任・専任され,平成6年4月から平成7年3月まで同大学工学総合研究所顧問を勤められました。

先生は,本学にご着任以来,長年にわたり寒冷地の建築技術の研究とその普及・指導に力を尽くされました。特に,寒冷地の通年施工の研究では,コンクリートの初期凍害防止対策や積算温度方式の利用など先駆的かつ独創的な成果を上げられ,この一連の研究に対して昭和35年に「寒冷地におけるコンクリートの性状に関する一連の研究」として日本建築学会賞(論文賞)が授与されました。 さらに,これらの成果を実用的な生産技術として体系化し,「寒中コンクリート施工指針案・同解説(日本建築学会)」などとしてまとめられ,また,国際的にも,国際材料構造試験研究機関・専門家連合(RILEM)の「寒中コンクリート指針」の制定に携われました。これらの業績は,寒中のコンクリート施工を,現在見られるように一般的な建築技術として定着させたといえ,北海道から昭和60年度の北海道科学技術賞が授与されました。 また,コンクリートの凍害研究の分野では,凍害のメカニズムをコンクリートの細孔構造の特性によって説明するとともに,膨張挙動の測定による耐凍害性の判定方法の提案などを行い,昭和48年に「耐凍害性指標としての長さ変化の適用性」として第1回セメント協会論文賞を受賞されました。さらに,一方では,寒地住宅の質的向上をはかるべく,高断熱・高気密化住宅に取り組み,その後の寒地住宅のあり方に大きな影響を与えました。 これらの業績により昭和61年に「寒地住宅の性能の飛躍的向上に貢献した業績」として北海道新聞文化賞(科学技術賞)を受賞されました。

また,建築材料学講座において先生から直接指導を受けた者は,大学教授をはじめとした多くの優れた研究者,技術者,行政官などとして,国内外で活躍しております。 学外においては,約3万5千人の会員数をもつ日本建築学会の北海道支部長,同会副会長を歴任するとともに,日本コンクリート工学協会では,副会長,会長として支部の創設を行うなど,その発展に尽力されました。 また,行政指導面においては,旭川市建築審査会長,北海道建築士審査会試験委員および建築士審査会委員・会長代行,建築審査会長などを歴任され,北海道の行政に大きな貢献をされました。

以上のように先生は,建築工学の教育・研究,指導を通して,関連領域の研究進展に多大な貢献をされました。先生のこのようなご業績に対し,平成3年に紫綬褒章,さらに,平成8年勲二等瑞宝章が授与されました。

ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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