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量子情報ってなに?

20世紀を代表する科学理論というと何を思い浮かべますか?
相対性理論? セントラルドグマ? もちろん,これらも重要ですが現代の産業・技術に大きな影響を及ぼしたものといえば量子論と情報理論ではないかと思います.量子力学はミクロの世界の論理を明らかにしたものですし,情報理論は情報というものを定量的に扱う方法を示したものです.現代のIT技術はこの二つを基礎にしてできあがっています. しかし,これまで量子論と情報理論は相互に影響することなく発展してきました.量子力学を知らなくてもコンピュータを設計をすることができますし,反対に情報理論を知らなくても半導体デバイスを作ることができます.

量子情報科学は独自に発展してきた量子的な考え方と情報理論が20世紀も末になって出会って生まれたものです.20世紀を代表する二つの科学理論の結合なのですから,そう思っただけでも素晴らしいことがおきそうです. 実際,安全性が永遠に保証される量子暗号,これまでのコンピュータでは宇宙の寿命程度かかる計算を数時間でやってのける量子計算,わずかな光で高い分解能を実現する量子顕微鏡などの量子計測,通信感度の向上,といった新たな情報処理・情報伝送の可能性が予言され,その実現が期待されています.
量子情報技術が究極の省エネ情報処理技術だ、と言いきるのにはちょっと躊躇しますが(冷却が必要なので)対象物にあたる光子数を小さくすることはできるのではないかと思います.そういうことで低侵襲の計測技術とか通信の密度向上とかに近未来に役に立てるかもしれないという期待はあります.

量子情報科学を学ぶ七つの理由

そこで量子情報科学を学ぶとお得なわけをあげてみましょう.
  1. 量子という極限的な状況なので通信や計算の本質的なところが見えてくる
  2. 量子力学や情報理論を別の観点から見直すことで新しい風景が現れ,理解が深まる
  3. 基礎理論と応用との距離が近いので,両方に興味がある人に向いている
  4. 量子力学,情報理論,数学,物性,光学,エレクトロニクスと様々な分野にまたがっているのでたくさんのことが学べる
  5. そのうちのどれか一つ(数学でも電子回路でも.もちろん物理も!)得意ならそこから入って,自分の能力を生かせる
  6. 情報処理技術に変革をもたらす可能性があり,大当たりをとるとノーベル賞か大富豪への道が開ける(?)
  7. 研究のネタが当分つきない

一般に壁に突き当たったときは基本に帰れといいます.通信や計算とは本当のところ何をしているのか?何が必要なのか?性能の限界を決めているものは何か?そういった根本的な問いが新しい解決法を導き出すかも知れないのです.原理的な意味を考えるとき,極限的な場合や単純化された場合を考えるのは有益なことです.量子はまさに極限であり,複雑なアルゴリズムやデバイス構造に隠される前の姿で計算の原理が現れてきます.
また,習った知識である量子力学や情報理論を量子情報という観点からもう一度見直すことで新しい光景が開け,新しい意味を味わえるようになることも期待できます(アルゴリズム理論の大家の先生が「量子計算を始めてようやくフーリエ変換がわかった.」とおっしゃっていました.そもそも私たちの理解したつもりになっている内容とは深さが違いますが.)さらに,量子情報は量子力学・情報理論と実現方法である量子エレクトロニクスやナノエレクトロニクスがクロスオーバーしているところです.演算操作の量子力学的な状態とその操作をどのように行うか,もともと難しいことなので理論で提案されたことをただ実現するというアプローチではできそうにありません.できそうなことをどのように使うかといった,アルゴリズムの側と実装する側の対話で新しい概念を生み出していくことになります.そういったダイナミズムもまた面白いところです.

以下に量子情報科学についての簡単な解説を述べますが,もう少し詳しくはこれまで行った講演の資料を見てください.また,ここでは概念的な話が中心で実際どんなことをやったかは最近の成果を見てください.

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